
開発した歯科医師より
PerioPerioのHPをご覧いただき、誠にありがとうございます。責任者の茂手木と申します。
本Webアプリを開発した経緯についてご説明申し上げます。
歯科医は歯周炎の進行に伴い、抜歯をしなくてはなりません。
歯周炎が進行し重篤になった時、インプラント処置に移行を考える時、患者が認知症になり歯のセルフケアが見込めなくなった時、歯科医は歯を保存するか抜歯するかで悩みます。そして同一のスケール、グレードであっても、再生療法を施し残したい歯と、抜いてブリッジに組み入れたい歯とがあります。
歯周炎指標は治療上の時々で、主治医の裁量権の中であくまで進行度の「ものさし」として使われます。しかしそれに止まらず、指標は患者にとって治療についてのインフォームドコンセントを得る大事な役割を請け負います。つまり、術者も患者も納得のいく、分り易く合理的な歯周炎進行度の評価方法の必要性を常々感じてきました。
歯周病が全身への疾患のきっかけや悪化の要因になることが分かってきたため、医療連携の機会も増えてきました。外科や内科など医療機関の医師から歯周病の状態について意見を求められたとき、どう書けばいいか、困惑した歯科医師も多いのではないでしょうか?
歯周病の診断や予後判断は歯科分野にとどまらず、医療全体でますます重要になってきています。ところが、血糖値やγGDP値など、疾患の今の状態を指し示す指標・ものさしが、歯周病の分野には実践的なものがあるとはいえない状態です。
患者さんに対しても、「あなたの歯周病は相当進んでますよ」と言っても、「ああ、そうですか」で終わり、なかなか患者さんへのインフォームドコンセントをスムーズに取れない、治療を適切に進められないケースもあるでしょう。
しかし、血糖値やγGDP、クレアチニンのように明確で具体的な数値で示せれば、患者さんも納得できるでしょう。数値で示せば、自分がどの程度の状況は分かるからです。また、改善や悪化など経時的な変化も数値があれば伝えやすくなります。
歯周病の進行度を示すものさしがないのは、その指標をつくるのが難しいからです。人種でひとくくりにはできませんが、大まかにアジア系とヨーロッパ系では歯根の長さが異なります。たとえば、日本人をはじめアジア人の歯根長はヨーロッパ系の人の歯根長より短く、歯種によってはその差は2mmに及ぶこともあります。
それはいち個人においても、歯種により歯根長および歯根膜面積は違います。私たちは歯種による違いについても、2024年に学術論文(Stages and Grades of the 2018 AAP/EFP Classification of Periodontitis Vary by the Tooth Type: A 5-year Observational Study. Motegi et al., 2024)で報告しています。
現在は、歯周炎新分類を適応して、簡易的な分類をしているのが実情ですが、この指標は欧米でつくられた指標であるため、私たちアジア人にそのまま適応すると、判定される分類に差異を生じることを、私たちは2022年に学術論文で報告しました。
PerioPerioはこの差を加味し、アジア人に適した歯周病進行度を評価する基準を取り入れることで、より正確な歯周病の進行度や予後の診断を可能に。咬合力と歯根膜断面の関係から求められる二次性咬合性外傷を基本とした歯周炎評価アプリ「PerioPerio」は、歯周炎進行度の実践的なものさしとして、また患者が理解し易いアプリとして、日本を始め世界各国で販売を開始しました。
より精度を高めた評価方法を求め、社員一同日々研鑽していく所存でございます。どうぞご愛顧の程よろしくお願い申し上げます。
歯科医師 茂手木義男
